2025年冬号 2024年度内国歳入法改正案 : 賃貸物件の原状回復費用の損金算入及び建物・構造物に関する減価償却について(香港)


BDO Asia - ジャパンデスクニュースレター 2025年冬号

 

2024/25年度予算案演説において公表された、原状回復費用に関する新たな税制措置、商業用及び工業用建物・構造物に関する年次減価償却の期限撤廃を受け、2024年度内国歳入法改正案 (‘賃貸物件の原状回復費用の損金算入及び建物・構造物に関する減価償却’) が2024年12月18日に立法院で可決され、2024年12月27日に条例が公布されました。  
 

原状回復費用の損金算入

賃貸借契約には、通常契約満了時または早期解約時に、賃借人が賃貸物件を元の状態に戻すこと(原状回復)を要求する条項が含まれています。これまで物件の原状回復にかかる費用は資本性費用とみなされ、損金不算入とされてきました。  

この改正は、企業の税負担を軽減するため、以下の条件を全て満たす場合、2024/25年度以降に発生した 原状回復費用の損金算入を認めるものとなります:

  1. 賃貸借契約の賃借人が原状回復費用を負担している。
  2. 賃貸借契約の賃借人が損金算入を申告している。
  3. 損金算入を申告する者が、賃貸借契約期間満了時、または早期解約時に、賃貸物件を原状回復する義務、または原状回復費用の全額か一部を負担する義務(明示的か黙示的かを問わず、また、賃貸借契約から生じるか、賃貸人と賃借人間の別の契約から生じるかを問わない)を負っている。
  4. 香港公認会計士協会により公表され、適宜改定されている香港財務報告基準第16号「リース」またはその他の類似の会計基準に基づき計上される引当金とは関連しない。すなわち、使用権資産の一部として計上された原状回復費用、またはそのような引当金の償却はこれに該当しない。
  5. 申告する原状回復費用の額が、その状況において合理的である。
原状回復費用の損金算入の対象となる施設の種類には制限がなく、すなわち、商業用、住宅用、または工業用建物の原状回復費用は、その施設が課税対象利益の生成に使用されており、必要な条件が満たされている場合、損金算入の対象となります。これは、実際に発生した原状回復費用にのみ適用され、会計上の引当金には該当しません。

内国歳入局  (IRD) はウェブサイト上で、申告された原状回復費用額が「合理的」であるかどうかを判断する際、特に、その額が建物を原状回復するための支払いである場合、各事例の事実関係と状況を考慮すると説明しています。「合理的」な金額とは、独立企業間原則に基づき、類似の賃貸物件(例えば、同様の性質や規模の賃貸物件)を元の状態に戻すための市場価格から大きく乖離しない金額となります。
 

商業用及び工業用建物・構造物の年次減価償却申告期限の撤廃 

現在、 25年(1965/66年度以前に最初に使用された建物・構造物については50年)の使用期間を超えた中古建物・構造物の購入した場合、この費用に関する商業用・工業用建物・構造物の減価償却は認められていません。

商業用・工業用の建物・構造物が期限内に売却された場合、買い手は、期限内の残りの年数に渡り、購入の際の支出額に基づく年次減価償却を申告することができます。しかし、期限後に建物・構造物を購入した場合、買い手はこの減価償却を申告することはできません。 

長期的にこのような格差は、買い手が中古の建物・構造物を購入する意欲を削ぐ可能性があります。ビジネスにより優しい環境を促進するため、本改正案は、2024/25年度以降、商業用・工業用建築・構造物の年次減価償却申告期限を撤廃するものです。内容は以下の通りです。

  1. 工業用建物・構造物(使用期限が満了しているもの)が、2024/25年度以前の基準期間に買い手により購入・使用される場合。 
  2. 商業用または工業用建物・構造物(使用期限切れであるか否かを問わない)が、2024年4月1日以降に開始する年度の基準期間内に買い手により購入・使用される場合。 

2024/25年度以降、購入時の支出額が全額償却されるまで、当初の残額に対して年4%の減価償却が買い手に認められ、今後は償却の期限は設けられません。

内国歳入法に基づく現行の規定に従って、売り手に対する残高調整は従来の通りです。 



BDO 香港 吉田 薫 KaoriYoshida@bdo.com.hk