2025年冬号 法人所得税について(タイ)

BDO Asia - ジャパンデスクニュースレター 2025年冬号



本ニュースレターでは、タイの一般的な法人所得税の税制について解説します。


1.納税義務者

タイで設立した法人及びタイ国内で活動を行っている法人等が稼得した利益について法人所得税の納税が必要となっております。なお、駐在員事務所についてはタイ国内で営業活動を行わない限り、法人所得税の納税はありません。一方で、法人所得税申告書(中間申告書であるPND.51及び確定申告であるPND.50)の提出は必要となります。


2.法人税率

タイの法人所得税の標準税率は20%となっております。なお、特定の事業(金融業等)に課せられる特定事業税を除き、日本で一般的に課せられる住民税及び事業税はありません。従って、一般的な日本法人の実効税率に比べ、タイ法人の実効税率は低くなっています。


3.法人税の中間申告

タイの法人所得税法上、原則中間申告書の提出及び納税が求められており、非上場企業においては、年間見積課税所得に基づく中間納付額の計算が要求されています。なお、年間の見積課税所得が実際の年間の課税所得よりも25%以上低かった場合で、かつ、当該見積の課税所得が低かったことを説明できる合理的な理由がない場合には、当該不足額に対して20%の延滞税が課せられます。一方で、中間納付額が前年度の年税額の1/2以上である場合には、延滞税は課されません。


4.確定申告

日本の法人税法と同様に、会計上の税引前当期純損益に下記の調整(①+②-③-④-⑤)を行い、税務上の課税所得を算出し、納税額を算出します。

 ①益金算入項目・・・会計上は収益に計上されていないが、税務上は収益(益金)として認識する項目であり、例としては無償又は低廉譲渡等による受贈益及び前受金のうち税務上売上(益金)として認識すべき部分等となります。

 ②損金不算入項目・・・会計上は費用計上しているが、税務上は費用(損金)として認識することができない項目であり、例としては引当金勘定、一定の交際費及び使途不明金等となります。

 ③益金不算入項目・・・会計上は収益に計上されているが、税務上は収益(益金)として認識しない項目であり、例としては一定の配当金となります。

 ④損金算入項目・・・会計上は費用に計上されていないが、税務上は費用(損金)として認識する項目であり、例としては特別償却費等となります。

 ⑤繰越欠損金・・・会計上の税引前当期純損益に①~④の調整金額を加減算した上で算出した金額がマイナスであった場合には、税務上繰越欠損金として取り扱われることとなります。当該欠損金は、欠損金が生じた翌期以降5年間にわたり繰り越すことが可能となります。


5.申告・納税期限

中間申告書・・・事業年度開始の日から6か月後の末日から2か月以内(12月決算の場合には、8月31日)に申告及び納税が必要となります。

確定申告書・・・事業年度終了日の末日から150日以内(12月決算の場合には、5月29日)に申告及び納税が必要となっています。

※電子申告及びオンライン納税を行う場合には、上記期限の8日後が期限となります。

6.税務調査の時効

原則は、2年又は5年(租税回避が疑われる場合等)とされている一方で、民商法上は時効が10年となっています。当該税務調査において、過少申告等が発覚した場合には、最大で未納付税額の100%(無申告の場合には最大で未納付額の200%)及び延滞税(月1.5%、最大で未納付額の100%)が課されることとなっています。

7.その他

本ニュースレターでは一般的なタイの法人所得税について解説しておりますが、実務上、タイの投資委員会であるThe Board of Investment of Thailandに認可されたプロジェクトから生じた利益については法人税が減免・免除される等多くの留意点があることから、不明点等は適時税務専門家に相談の上、申告及び納税を行うことが望ましいと考えられます。

 
BDO タイ 土屋 智司 satoshi.tsuchiya@bdo.th