2025年春号 日本法人からの海外派遣において留意すべき税制

BDO Asia - ジャパンデスクニュースレター 2025年春号

日本法人が海外展開するにあたっては、自社の役員・従業員を海外の現地法人に派遣することも多いかと思います。税務的な観点からは、海外・日本における法人課税、及び従業員・役員個人に関する個人課税のそれぞれに留意する必要があります。本稿では、これらの4項目について簡単に解説します。

海外における法人課税

法人税法上、日本親会社の役員・従業員が海外子会社へ出向・出張する場合、基本的に現地子会社があるだけでは現地国における日本法人(親会社)のPermanent Establishment (PE, 恒久的施設)とはみなされませんが、ある一定の状況下においては、日本法人が現地国において自ら事業活動を行っているものとして、PE認定され現地国で法人課税を受ける可能性があります。PE認定の可能性を検討する際には、現地国における法令を検討する必要がありますが、日本と租税条約を締結している国において事業活動を行っている場合には、日本と当該国との間における租税条約の内容も確認して、PE認定の可能性について検討する必要があります。

もし現地国においてPE認定された場合には、日本法人(親会社)が現地国において稼得した所得に関して、現地国にて法人税申告書を作成・提出し、法人税を納付することになります。また、PE課税分は、日本の法人税計算上、外国税額控除の適用の余地がありますが、日本親会社に十分な国外所得がない場合や租税条約に適合しないPE課税などで、海外で課された税金について外国税額控除制度による二重課税排除ができない場合がある点には留意が必要です。さらに、 PE認定された場合、日本法人からの出張者は、その出張日数が一定日数(例えば183日)以下であっても免税の対象とならず、現地での個人所得税の納税が必要となる可能性がある点にも留意が必要です。

日本における法人課税

日本の税法上、海外現地法人の業務に貢献している海外派遣従業員等に係る給与を日本親会社が負担した場合には、海外子会社への無償の贈与として国外関連者に対する寄附金と認定される可能性があります。国外関連者に対する寄附金に該当すると日本側で肩代わりした金額が法人税法上、永久に損金に算入されないことになります。

また、海外現地子会社への出張者の活動が役務やノウハウ等の提供であると みなされた場合、当該現地子会社から日本親会社に対して対価を支払 うべきとして以下のような課税がされる可能性があります。
  • 移転価格税制: 独立企業間での取引価格で対価を受領したとみなして課税される。
  • 国外関連者に対する寄附金: 無償の寄附をしたとして寄附相当額を所得に加算される。

役員に対する個人課税

役員の場合、勤務地を問わず日本法人(親会社)役員の職務として支給される役員報酬については、従業員の取り扱いとは異なり、原則として日本国内において個人所得税が課税されることになります。また、役員の場合には、その勤務地を問わず、法人の役員の資格で得られる報酬については、当該法人の居住地国に課税権が与えられているため、海外子会社の役員として報酬を受ける場合、たとえ1日も現地に滞在していなかったとしても源泉所得税等の現地所得税が課されることになる点も留意が必要です。

従業員に対する個人課税

日本との間に租税条約が締結されている国に従業員を派遣するようなケースにおいて、以下の3つの要件をすべて満たす場合、短期滞在者免税の規定が適用され、進出先国での個人所得税課税が免税されることになります。

  1. 当該国における滞在日数が一定の期間(例えば183日超)を超えないこと
  2. 従業員給与等が海外現地法人から支払われていないこと
  3. 日本親会社が当該国においてPEを保有する場合には、当該PEが当該従業員の給与等を負担していないこと

また、海外赴任規定上、赴任者給与の税引後手取額を保証しているようなケースにおいては、会社が海外現地の所得税や社会保険料を肩代わりして負担することになります。このような場合には、いわゆるグロスアップ計算(海外現地の個人所得税の計算において、給与総額を手取金額から逆算して税額を算定する)の実施が必要になります。

 
BDO 税理士法人 岸 賢一郎 
kishi@bdotax.jp