2025年春号 所得税法セクション13W(株式の処分所得に対する課税の免除)の拡充及び恒久化(シンガポール)
2025年春号 所得税法セクション13W(株式の処分所得に対する課税の免除)の拡充及び恒久化(シンガポール)
1.所得税法セクション13Wについて
所得税法セクション13Wは、2012年6月1日から2027年12月31日までの期間において、企業が普通株式を処分(売却)した場合、以下の条件を満たせば、当該普通株式の処分によって生じた売却益に対する課税が免除されるとするルールです。
①売却企業は、投資先企業の普通株式の少なくとも20%を保有していること。
②当該普通株式を、処分前24ヶ月以上継続して保有していること。
シンガポールでは、キャピタルゲインは原則、非課税とされている一方、所得税法上、具体的にどういったものがキャピタルゲインとされるのか明確な基準が定められているわけではありません。
したがって、企業は株式売却益がキャピタルゲイン(非課税)なのか、インカムゲイン(課税)なのかを判断するために、原則として「事業性判断基準(badges of trade)」として知られる判例法の原則に頼らざるを得ないことになります。事業性判断基準は、裁判所の判決から導き出されたガイドラインであり、株式取得の意図、取引の頻度、処分の方法などの複数要素を検討する必要があり、複雑であることと、主観的解釈に依存するため、税務リスク(不確実性のリスク)を生じさせることがあります。
しかし、セクション13Wがセーフハーバー・ルール(特定の条件を満たす場合に、課税当局が納税者の処理を原則として否認しない)として機能することにより、条件を満たす普通株式の売却はキャピタルゲインとみなされることになり、企業にとって税務処理の簡素化及び税務リスクの軽減を図ることが可能となります。
2.2025年度シンガポール予算による改正
2025年2月18日に公表された2025年度シンガポール予算において、当該セクション13Wに関し、以下のような改正が行われることが発表されました。
①2027年12月31日までという時限措置であったが、当該期限が撤廃され、ルールとして恒久化される。
②対象範囲が拡充され、普通株式に加えて、会計基準に基づき資本として処理される優先株式の処分も対象に加えられる。
③24ヵ月継続保有要件について、単一企業だけではなく、企業グループレベルで24ヵ月継続保有することで、要件を満たすことが認められる。
当該改正は、2026年1月1日以降の株式処分に対して適用される予定であり、詳細は2025年第3四半期までに、シンガポール内国歳入庁(IRAS)より公表される予定です。
3.改正によるメリットと、今後の実務上の課題
当該改正により、免除制度が恒久的に存続することを前提に、企業はシンガポールにおいて、確実・安定した長期投資を計画することができると考えられます。
また、対象範囲に優先株式が加えられたことや、継続保有要件をグループレベルで判断できるようになったことから、グループストラクチャーの柔軟性も高まることが予想されます。
しかし、これらの改正に伴う実務上の課題として、特に優先株式がハイブリッド金融商品(資本と負債の要素を両方持つ金融商品)として機能する場合の取り扱いや、そのような状況で持株比率の判断をどのように実施すべきかという点で、不明瞭であり、今後のIRASにおいて公表が予定される詳細情報を待つ必要があるものと考えられます。
BDO シンガポール 森田 陽平 yoheimorita@bdo.com.sg